最高裁判所第三小法廷 昭和35(オ)577 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人佐藤雪得の上告理由第一、二点について。
論旨は、原判決には理由不備、理由齟齬ないし当事者の申立てざる事項につき判
断をなした違法があるというにある。しかし、ある契約が甲乙間に成立したものと
主張して、右契約の履行を求める訴が提起された場合に、裁判所が右契約は甲の代
理人と乙との間になされたものと認定しても、当事者の申立てざる事項について判
断をしたものとなし難く、違法でないことは当裁判所の判例(昭和三一年(オ)第
七六四号、同三三年七月八日第三小法廷判決、民集一二巻一一号一七四〇頁)とす
るところであるから、右判例の趣旨に反する所論違法の主張は採用できない。論旨
はすべて理由がない。
同第三点について。
論旨は、原判決には釈明権の不行使あるいは審理不尽の違法があるというにある。
しかし、本件において、被上告人と上告人間に原判示のような金員消費貸借が成立
したと主張して、その残額の支払を求める被上告人の訴に対し、原審が該消費貸借
は上告人の代理人Dと被上告人との間に成立したものである旨認定したのであるが、
すでに一審において右Dに対する上告人の代理権授与の有無に関する証拠が提出さ
れており、同審判決によつて代理権の授与が肯認されていることは記録上明らかで
あるから、原判決には所論釈明権の不行使、審理不尽の違法は認めらない。また論
旨引用の大審院判例は事案を異にし本件に適切でない。論旨は理由がない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
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最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 高 橋 潔
裁判官 河 村 又 介
裁判官 垂 水 克 己
裁判官 石 坂 修 一
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